〆伝説の秋田
犬ハチ
以前に映画化された脚本をドラマ版としてリメイクした話のようで、犬好きの人間のツボを的確に突いてくる話作りは流石。飼い主の先生の次第に深まっていく愛情、ハチとの幸せそうな時間がゆるやかに描かれます。後に訪れる先生の死から生じる落差が、大きくなるわけで…。お迎えを続ける哀切には、ホント犬好きの人間には堪えられないものがありました。渋谷駅前屋台村の住人達が、ハチを暖かく見守るのですが、時が経つにつれ、薄汚れ痩せこけ…それでもお迎えを欠かさないハチ。もうホントにボロボロになって見ていたんですが、ラストシーンで、画竜点睛を欠いてしまった。
改札口の前で倒れるハチを、駅員、屋台村の主人達、先生の未亡人みんなで看取ってしまうのですよ。うわぁ…それ違うだろ。パトラッシュやネロだって、誰にも知られることなくひっそり息を引き取るところに、悲しみが募るわけで、暖かく送られたら台無し。ラストからつながるEDで、幸せだった先生との日々(ハチの末期の夢?)が流れるのですけど、未亡人に抱かれたところからそのシーンに行ってもなぁ…。かつて見た劇場版では、誰も気付かず、雪の渋谷駅でひっそりと息絶えて、カメラが引いていくという素晴らしいラストだったのに、なんでこんな蛇足EDにしてしまったんだろう。
実際のハチも駅近くの公園で息を引き取っていたのを、後に発見されたそうです。劇場版当時に知ったことですがハチが先生と暮らしたのはほんの1年半ほどだったそうで、その後10年以上に渡り、渋谷駅にお迎えをしていたと。その事実だけでも泣けてきます。あと余談ですが、渋谷経由で学校に通っていた私の祖母は、生でハチを見ていたそうで、当時でもかなり話題になっていたそうな。
蒼穹のファフナー RIGHT OF
LEFT 〜single program〜
昨年末放映のSP番組。鑑賞していたんですが、年末のドタバタに紛れてすっかり感想上げるの忘れてました。
前情報が流れたときには、今さらファフナーってどうよ…と、正直小馬鹿にしていたんですけど、見終えたらマジで涙腺緩んでました。よもやファフナーで泣かされるとは…。
物語は、一騎達がファフナーに搭乗する1年前の話。竜宮島がフェストゥムに発見されかけたことから、島全体が迎撃体勢をとるための準備期間・60日をかせぐために、竜宮島の左舷を切り離し、囮とする作戦。ティターンモデルのファフナーと、一騎達の上級生がこの作戦に望むことに…。
脳内にメモリジングされたアルヴィスの情報が、自発的に呼び起こされた者から、フェストゥムと戦う資格を得る→卒業という事実や、ファフナーの操縦システムと、それに伴う同化の危険性など、本編では細部まで説明されていなかった基本設定が、全て明らかにもなっています。本編の第一話で瞬殺された眼鏡っ娘・果林や総士が先駆けてアルヴィスに入っていたのも、一騎達より先に目覚めていたという話で。
総士がファフナーのパイロットとして不適格で、ジークフリードシステムへ移乗を余儀なくさせられたり(自分だけが安全な後方にいられないと強く抗議するシーンは印象深い)、終盤で、果林がマーク・ツヴァイを乗りこなしていたり、本編に至るまでの重要な経過もそこはかとなく。翔子が元気な姿を見せるだけでも、切ないものがあったなぁ…。
幾ばくもない余命を悟っている主人公・僚と、父の死をきっかけに作戦への参加を決意したヒロイン・祐未。互いに好意を抱きながら、僚が祐未をデートに誘ったその日に、父が死亡するという事故をきっかけに、ぎこちない関係になり、二人は作戦へ参加していく。作戦の始動からフェストゥムとの戦闘が激化する中、一人また一人と死亡、同化して消えていく日々を過ごす中、次第に心を通い合わせるようになる二人。祐未は父の真意に気付き、生きることをあきらめていた僚に気持ちの変化が訪れる。キャラの心理描写も素晴らしいものがあったなぁ<特にこの後が。
皆が希望を抱いて書いていた落書きに、「どうせみんないなくなる」という失意の一言が殴り書きされたときの衝撃もすごいものが…。皆の心が折れそうになる瞬間。やるせなく、ぶつけようのない怒り、悲しみ、苦しみ、寂しさ。プチリヴァイアスとでもいうかな、リミットはあるのに息苦しさが増していく日々。
意志を読みとるフェストゥムに対するため、乗員には知らされていないブロックが解放されることで、新たな弾薬や作戦が授けられていくという戦法で激戦をくぐり抜け、最後の脱出艇ブロックが明らかになったところで、海中に出現出来なかったはずのフェストゥムが侵攻してくる。竜宮島の位置を探られないため、同時にフェストゥムの進化を竜宮島に知らせるため、海溝に落ち、フェンリルを発動させる僚と祐未の2機。死を決意した二人が、ここでやっと告白するのですよ…。しかも祐未の最後の言葉は届くことなく、同化してしまう。手が離れる二機のファフナー。一人残された僚はメモリーに自分たちの戦いを語り、フェストゥムへ自分たちの生きようとする意志を投影して最後を迎える。
作戦メンバーの回収に向かっていたマーク・ツヴァイは「そこにはもう誰もいない」と告げられ、帰投させられる瞬間の、感情の高ぶりは筆舌に尽くしがたいものが。
四ヶ月後、フェンリルで大破したティターンモデルが、僚の計算通り潮流に乗って竜宮島へ流れつく。僚の飼っていた犬、プクがパイロットシートに駆け寄ってすすり啼き、遠吠えするあたりで、ぶわっときてしまった。そして、音声
メッセージが流れ、僚の声を耳にするアルヴィスのメンバーが慟哭するところで決壊。angelaのバラード曲が、また
絶妙に映えるんだよなぁ…。少しの時間をおいて、果林がパイロットシートにいるプクを見つけると、プクは既に永眠していた…。反則だよこれ。
平和を得るために強いられる(た)犠牲、それでも生き残ろうとした意志を、受け継いでいくという物語。本編への
架け橋としての物語でありつつ、僚・祐未達の物語でもあった。この顛末を生徒の中で知っているのは、総士と果林(果林は第一話で死亡するため、実質総士)だったというのもすごい繋がり。総士が背負っていた厳しい覚悟の裏には、こんな背景があったのかよと。
冒頭にも述べましたが、ファフナーに泣かされるなんて思いもよらないことでした。特番だけに作画レベルは最高
クラスで、ティターンモデルとフェストゥムの戦闘描写も、すごい気合い入ってたなぁ。本編がテコ入れで化けた作品列に、ファフナーはその名を燦々と連ねたと思っていますが、このSPはその集大成ともいえる名作でした。
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